私の天ぷら観は成生前・成生後でくっきりと別れます。それまでは天ぷらって良いお値段取る割に魚や野菜の美味しさを寿司程には感じられないと思っていたのですが、成生に伺った後その価値観が変わりました。成生ぐらい天ぷらが美味しい店があるんじゃないか、と言う事でこれから時間をかけていくつか行ってみようと思います。
今回はこちら。御徒町と蔵前の間ぐらいの下町にあります。東京出身の割にこの辺に初めて来ましたが閑静な住宅街で良い意味で期待を裏切られました。
ご主人はあの山の上で副料理長まで務められ、こちらをオープン。ミシュラン一つ星です。
天ぷらはカウンターでなるべく頂きたいのですが、この日はテーブル席で。税込16500円のコースをお願いしましたが、卓上にはメニューがあります。これ全部出てくるのかなとワクワクしたのですが結論から言うと全部じゃありませんでした。期待するからやめてくれ。私は腹が減っている。
まずはビール。日頃ワインばかり飲む私ですが、ワインを飲めば飲むほどビールって美味くなる不思議。私だけでしょうか。
塩と天汁、大根おろしが置かれます。なるほどこちらのお店はいきなり天ぷらスタイルなんですね。望むところです。
トップバッターはお馴染み海老のお頭。サクサクパリパリと小気味良い歯応え。あと100個ぐらい食べれそうなぐらい軽い。
海老は車海老。車海老の甘い香りが鼻腔を刺激します。海老の甘さって上品だよなあ。
海老はもう一本出ます。
銀杏。この時まだ9月なので出たてのもの。香りはもう少しでしたが仄かな苦味が酒を進ませます。
早くも登場。キスです。浅目の火入れであり、キスの身の柔らかさがダイレクトに感じられます。間違い無い美味しさ。
水茄子。へー、水茄子を天ぷらにするんだ。貴方の想像通り中はめちゃくちゃ暑いのですが、火傷しそうになりながらも頬張ります。これも茄子の香りがいい。
こちらは雲丹を紫蘇の葉で巻いたもの。当然に美味しいのですが、この夏は雲丹を沢山頂いたのでその中では中くらいでしょうか。
オクラ。オクラってネバネバ感が特徴ですが、こちらはサクッとした食感。これはこれであり。
稚鮎。鮎さんがカラッと揚げられており気の毒な気がしないでも無いですが、美味しく頂きました。ありがとな。
茗荷。美味しいのですが物足りないというかさっぱりしているので、食べてる感がもう少し欲しいところ。例えば夏野菜だけでかき揚げとかにしたら茗荷の香りが引き立ちそう。出来るのか知らんけど。
鱧。まあ鱧とはこんなもんである。ありがたるものでも無いと言うのが個人的な意見です。
伏見とうがらし。所謂獅子唐の様に辛味はそれほどなく苦味が良い。でも少し物足りないなあ。
ボケちゃって申し訳無いですが、甘鯛。鯛に関しては先日まで伺っていた熊本が圧勝ですね。これは分が悪いかも知れません。
アスパラ。天ぷらで良く出ますがこちらは中ぐらいの味わい。ジューシーです。
でた、メゴチだ!メゴチ特有の強い身の香り。キスより好き。あと5本ぐらい下さい。
穴子。美味しいのは美味しいのですが、特徴的な何かはちょっと感じられず。
〆は天丼。タレがしっかり付いており、赤出汁もしっかり。最後にガツンと来ましたね。
最後にアイスで御馳走様でした。
2人でビール1本に日本酒1合で35000円。あれ、全然飲まなかったな。お会計的にはこんなもんかなぁと言う感じです。
最初は油の軽さが心地よくスイスイ食べれるなあと思っていましたが、後半までその軽さが維持されたので個人的には物足りませんでした。逆に言えば揚げ物を食べてるとは思えない食後感です。
全体的な流れも少し単調だったかなと思います。旬の野菜を出して頂けるのは良いのですが、野菜の方向性が全部似通っており、油の軽さもあって食べてる感に乏しいと感じました。
これは好みでしょうね。私みたいな揚げ物をバクバク食べる輩向けというより、少しご年配の方には良いかも知れません。揚げ物なんて、という方には逆にこんなに食べれるんだと感動させるのかも。
そんな無茶苦茶なお値段でも無いですし、予約がめちゃくちゃ困難という訳でも無いですし、そういう所が良いのかも知れません。そもそも天ぷらとか寿司で予約が全然取れないとかって意味がわからない。私みたいな輩が世の中には多いという事でしょう。その意味でこういうお店があるというのは嬉しい。
雰囲気も落ち着いていますし、両親とか連れてくるには良いかもな。揚げ物がキツくなったらまた来ます。御馳走様でした。
てんぷら 下村
03-5809-2866
東京都台東区三筋1-11-13
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13213663/