サイゼリヤからロブションまで

サイゼリヤの様な格安店からロブションの様なミシュラン三つ星店まで。東京はもちろん地方の小都市のお店まで。日本国内はもちろん海外まで。幅広く伺ったお店を紹介しています。

九州のとある鮨屋

※今回の記事は特殊な事情があり、お店側に迷惑をかけない様、店名は伏せさせて頂きます。

 

前日の北九州の寿司屋でがっかりしたのですが懲りずにお寿司を食べに来ました。北海道でも寿司を食べ、九州でも寿司ばかり食べと一端の寿司ラヴァーです。

 

f:id:leglutton:20200918111305j:image


まずはビールで乾杯。7月は雨ばかりでしたが8月に入って晴天が続き気温も鰻のぼり。そんな炎天下の中をロードバイクで走っていたので今日もビールが細胞に染みます。

 

f:id:leglutton:20200918111324j:image


トップバッターは蛤と茄子。千葉県の蛤との事ですがド級に濃厚な蛤です。個体も大きく乗っけから強烈な先制パンチ。

 

f:id:leglutton:20200918111343j:image


続いては天草の赤雲丹です。北海道で散々雲丹を食べましたが、それらと比べるとこちらの方がさっぱりとしています。とは言えクリーミーさもあり、正統派の味わい。前日の雲丹より全然美味しい。

 

f:id:leglutton:20200918111402j:image
f:id:leglutton:20200918111405j:image


ビールは秒で飲んだので日本酒へ移行。メニューに無いものもあるそうで下駄を預けます。岐阜のみちさかりの純米。キレがありスッキリしていて最初の日本酒として最適です。

 

f:id:leglutton:20200918111425j:image


こちらは鰆。これも天草で獲れたもの。九州ではこれぐらいから鰆が出始めるそうです。1日だけ寝かせたらしいのですが、少しねっとりとした食感。鰆は淡白になりがちなのですが、この食感のおかげで淡白になり過ぎず美味しい。

 

f:id:leglutton:20200918111447j:image


ここで毛蟹の茶碗蒸しが来ました。うわーめちゃんこ美味しいぞこの茶碗蒸し。蟹の出汁が出ておりひたすらに美味しい。蟹の身もゴロゴロと入っており、また小さなお餅も入っていて食べ応えも抜群。過去最高に美味しい茶碗蒸しだったかもしれません。ちなみに隣のお客さんもこの茶碗蒸し美味しいと連呼してましたので間違いないでしょう。

 

f:id:leglutton:20200918111514j:image


こちらは手取川純米吟醸。豊潤な香り。ずっとクンクンしたい。

 

f:id:leglutton:20200918111532j:image


いわしのサーディン。寿司屋でこれは面白いですねえ。水と脂だけで煮込んだそうですが、そうとは信じられない程濃厚。猛烈に白ワインが飲みたくなりました。

 

f:id:leglutton:20200918111555j:image


続いても面白いメニュー。本鮪のあばらの筋の部分を焼いたものです。赤いのは柚子胡椒。筋なのでグニュグニュとした食感なのですが、噛めば噛むほど脂が出てきて、もはやこれはお肉です。要するにめちゃんこ美味しい。柚子胡椒のピリっとしたアクセントも良いですね。面白いだけでなくちゃんと美味しいのが素晴らしい。

 

さて握りに移行します。

 

f:id:leglutton:20200918111617j:image


まずは鹿児島の花鯛。先程から感じていたのですが薬味の香りがとてもフレッシュ。淡白になりがちな鯛の味も濃く、満足度の高い握りです。

 

f:id:leglutton:20200918111857j:image


こちらは天草のヤリイカ。見た目通りねっとりと舌に絡みつく甘さがたまりません。かぼすの鮮やかな香りも良く、シャリとの相性も良い。

 

f:id:leglutton:20200919064859j:image


島根県の鯵。マッチョですねえ。その筋肉質な身は噛むと青魚特有の香りがふわっと香ります。青魚評論家の私も恵比寿顔。

 

f:id:leglutton:20200919064921j:image


酒がすぐ無くなるので追加。不動の無濾過生原酒。この手にありがちな強い癖はそれほどなく、とは言えしっかりとした味わい。大将は相当酒飲みと見ました。

 

f:id:leglutton:20200919064947j:image


天草の車海老。もうプリップリ。先程の鯵は例えるならプロレスラーの様な男性的な印象を受けますが、こちらはアイドルの様な女性的な弾力。身の弾力も色々あるんだなあと感じさせてくれます。

 

f:id:leglutton:20200919065058j:image


4番サード、雲丹。こちらは紫雲丹との事ですが赤雲丹に負けない程濃厚。若き主砲村上の様です。そう言えば村上って熊本出身だったな。

 

f:id:leglutton:20200919065120j:image


続いては韓国で取れたアカムツです。ご飯と混ぜ混ぜして頂くのですが、これは良いですねえ。アカムツの溢れるほどの脂と酢飯がとにかく相性が良く、かつ食べ応えもありパーフェクト。ここでこういう変化をつけるのも憎い演出です。

 

f:id:leglutton:20200919065144j:image


アイルランドでとれた鮪の赤身の漬け。これはまあ普通に美味しい赤身です。これまでが良すぎたので相対的に印象が薄くなってしまっただけかも知れません。

 

 

と、ここまで順調に食べていたのですが、ここで大将から「申し訳無いのですが、先日切った傷が開いてきてしまったのでここで終わりにさせて頂けませんでしょうか。」との申し出が。確かに先程まで付けていなかった手袋を付けています。

そして「申し訳ありませんのでお代は結構です。」の一言。


え?と一瞬呆然とし、いやいや流石にそれは、と私ともう1組居たお客さんが申し出ますが、いえいえ申し訳ありませんので、と。

先に帰られたお客さんに出されていたものを見る限り、あと2-3品という所であり、8割方もう食事は済んでいますし、お酒も飲んでいるので流石にこちらが申し訳ないと何度か私ももう1組の方もお話するのですが固辞。

最終的にはもし宜しければまた来て下さいとの事で次回は優先的に予約をさせて頂けることとなりました。


この一連のやり取りの中で、これぞプロフェッショナルだと強く感じました。料理は8割方終わっており、また見る限りでは血が出ている様な事も無く、隠して握ろうと思えば問題無く握れたはずです。もし握れなくても出した分だけお代を、と言われればこちらとしては全く異論なくお支払いするぐらい、すべてが美味しく満足のいく料理、握りでした。それでも固辞される姿勢に私はプロの拘りと矜恃を強く感じました。


それと共に前日の事が思い起こされます。味だけでもこちらが圧勝なのに、その姿勢、矜恃は極めて対極な様に思えました。もちろん商売なので利益は大事です。利益が無ければお店を続けていく事は出来ないし、すなわち人を喜ばせる事も出来ない。

でも料理とはニーズだけで存在するものではありません。自分が正しいと思う料理を作る事も極めて大切であり、だからこそ料理人のことを職人と呼ぶのだと思います。その職人としてのプロ意識の高さに感動を覚えました。


恐らく私はこれからこのお寿司屋さんに幾度となく通う事になると思います。それはそもそも私が出会ったお寿司の中でトップクラスに美味しい事は勿論、この実直な大将の姿勢に感動を覚えたからです。

三井物産初代社長の益田孝は「眼前の利に迷い、永遠の利を忘れるごときことなく、遠大な希望を抱かれること望む」という言葉を残しています。私は大変この言葉が好きなのですが、正にこの言葉通りの大将の姿勢にいたく感銘を受けました。

 


自分語りが過ぎました。戻ります。

 

f:id:leglutton:20200919065317j:image


終わりだと思ったんですが、お吸い物を出して頂けました。お代払わないのが分かっているのに申し訳無いと思いつつ、出して頂けるものは遠慮なく頂く貧乏性の私。眼前の利に迷いがち。

 

f:id:leglutton:20200919065341j:image


少しもう1組の方と大将とお話していると、今日は珍しいのがあるんですと、白甘鯛を出して頂きました。こちらも悪いですと言いつつちゃっかり頂きましたが、これがむちゃんこ美味しい。甘鯛特有の甘い香りもさることながら、脂のノリが抜群でとにかく濃厚。甘鯛でこれほどまでに味の濃いものは初めて食べました。

後からネットで白甘鯛を調べましたが(ここでも貧乏根性が出る)、かなりレアな魚らしく高級魚でした。何というか商売っ気が無いというかもはや慈善事業なのでは無いか。

 

f:id:leglutton:20200919065406j:image


最後に玉子も。いやもう普通に一通り食べてるやん。鱧のすり身が入っているそうでふわっとした香り。

 

 

お代の件はあれど、そもそもトップクラスに美味しいお寿司でした。どちらかと言えばしっかりとした味付けであり酒飲みはまず好きでしょう。日本酒の揃えも良く、半合から頼めるので下駄を預けてグイグイ飲めます。


上述しましたが薬味がどれもハッとするほど新鮮で香りが高く、またネタも何を食べているかはっきりと分かる香りであり、この点も非常に印象的でした。寿司をよく食べる様になって香りが非常に重要だと気づきつつあるのですが、その香りの良さがとても良かった。またシャリの酢もちょうど良くネタとの相性をよく考えられてるなあと感じます。


オイルサーディンやマグロの筋を焼いたりと発想も柔軟。寿司という料理はどうしても単調になりがちなのですが、上手く変化をつけているので、飽きる事なく次は何が食べれるんだろうという期待感が湧いてくるお料理でした。

 


個人的には鮨一幸と比類する程美味しかった。前日の寿司では意気消沈してしまいましたが、九州の寿司も美味しいなあと改めて感じる事が出来ました。


また必ず伺います。次はちゃんと払わさせてください。御馳走様でした。